みなさん、小学校英語改革ってご存知ですか?
これ、国が今推し進めている入試改革・教育改革の一環なんです。
大学入試が2020年に大きく変わる事はもう色々言われていますよね。
もうすぐなのにまだハッキリ決まっていない少々不安を感じる改革です。
でも、大学入試は大きく変わるんだ!という目標は決定です。
現行のセンター試験はなくなり、大学入学共通テストが実施されます。すでにプレテストは実施され、段々と試験内容の方針が定まりつつあります。
その大学入試に対応するために、高校でも今までの授業をガラリと変え、大学入試に対応するような授業を意識しています。でも高校だけで急に変えるのは大変です。生徒に意識させるにはどうしたらいいか。
そのためには、中学校から準備してもらおう!ということで高校入試をガラリと変えます。すると、中学校から授業改革が必要になります。こうなると、中学校でも同じ発想になり、特に政府が力を入れたいと思っている英語改革が小学校に降ってきたという流れです。
今の中1・小6年生は昨年度から試験導入された英語の授業を小学校で体験しています。そして2020年には小学校5・6年生(今の小4・小5)で英語が完全に教科化、小3・4で履修開始。また、プログラミング教育も必修化されます。
でも、先ほど大学入試改革の全貌がまだはっきりしていないとお伝えしましたよね?元がまだはっきり決まっていないので、この英語改革も非常にふわっとしています。
学習塾で働いている身としては、今はまだ試験導入といえど、一時のゆとり教育の大失敗のようにならなければいいなという気持ちです。
今回は噂レベルの英語改革を試験導入が1年経過して、塾に通っている生徒の様子などを通して英語改革の影響が実際にどうなのかをお伝えいたします。
<小学校での英語導入の発想>
とにかく「日本は母国語以外の言語にとても弱い」というイメージ。
これからグローバルな人材を育てていくにはやっぱり英語をもっと話せるようにしないとね!ということでの英語改革です。
そこで、もっと英語を小さい内から話していれば得意になるんじゃない?の発想で、小学校から導入。ついでに大学入試に合わせて中学も高校も英語のレベルをあげよう!だって小学校から英語やるんだもの!土台はできているよね☆と、簡単にいうとこんな感じです。
【スポンサーリンク】
<授業>
では具体的にどういう授業をするのか
- 歌
- 会話
- 教科書の文章リーディング
基本の授業はほとんど歌や会話です。まあ、小学生ですから、とにかく楽しみながら英語に慣れていってほしいということです。
【現実】
英語が好きな子→別に楽しくない
英語が嫌いな子→もっと嫌い
という意見が当塾では多かったです。というより、学校の英語の授業が楽しいと答える子は今のところいません。あらら。。。
「英語が好きな子」は、すでに英会話教室に通っていたり、家で英語に触れる機会がある子で、「英語ができる子」ととらえてください。今は英会話教室に幼い頃から通っていたり、ご両親、または片親が外国の方、親戚が外国の方、または親戚が外国に住んでいる。しょっちゅう海外に行く家庭も多いので、「英語ができる」子は1クラスに3割程度います。小学校ですでに英検3級を持つ子も増えています。(それ以上は日本語が難しいのであまり取得している子はいませんが、それ以上の級を保持している子もいます。)
そんな英語ができる彼らにとって、小学校の授業はつまらないそうです。
できる子とできない子の間に差がありすぎるのと、それを教える先生が日本人で英語がそんなにできない先生ですから、当然といえば当然のような気もします(ネイティブの先生が指導してくれる学校もあり)
そして、もちろん「英語ができない子」にとっては楽しくない時間なのだそうです。
<基本方針:書けなくても、聞けて話せればそれでいい>
教科書の中身は正直なところ、現在の中学校の内容よりも高度です。(教科書は本格導入の時にまた変わるようですが、レベルはそんなに変わらないと思います。)
ips細胞の山中教授についての話や宇宙ステーションの仕事の話など、(英語の前に国語だろうと突っこみたくなる内容)今までの英語の教科書の使えない英語代表「This is a pen.」の影はありません。
そんな難しいレベル無理なのでは?と思うかもしれませんが、「子供は好きな事ならすぐ吸収して話せるでしょう?」という希望の元、「聞いてなんとなく意味が分かって、自分の事をいっぱい話せればOK!」ということらしいです。
そして文法や「書く」ということは一切しません。また、主語も「I」と「You」のみの学習です。
「They」「We」「He」「She」などは覚えなくてもいいし、とにかく書く必要はないということで、英語の難易度のバランスを保っています。
小学校で会話重視の英語をやってくれるのであれば英会話教室に通う必要なさそうですね。
<問題点>
苦手な子、得意な子がいても、英語に触れる機会があるのはいいことだと思います。
でも、以下のような問題があります。
- 教える先生の質に差がある
- 各小学校で英語の授業の時間が統一されていない
- 小学校で英語を学習することになったので中学校での学習単語量が今までより大幅にアップする
先ほども少し触れましたが、教える先生の質に差があるのは、上達に大きく影響します。
ネイティブの先生がいる学校はいいですが、(それだって、オーストラリア英語、イギリス英語、アメリカ英語 等 発音も単語も違うのですが)日本人のそんなに英語が得意ではない先生しかいない学校は、先生も子供達も大変です。
また、一応「〇時間やった方が好ましい」という授業時間の指針はありますが、他の教科も削れないので、「やれるところはやってください」という、完全に各学校に任せた指針なのです。
ということは、1週間の内にたくさん英語をやる小学校と、全くやらない小学校が存在するということです。
これでは各学校によって、英語のレベルに差がでてしまいますよね?そしてもっと恐ろしいのが、それぞれ違うレベルの英語力の小学生達が同じ中学校に進学する場合があるということです。
近隣の小学校を卒業した生徒さんは同じエリアの中学校に通いますよね。そして片方の小学校では英語をかなりの時間学習していて、片方では全くやっていないとします。
中学校としては、小学校のカリキュラムはしっかり履修している前提で授業をするわけですから、小学校で英語をほとんど学習していない子はおいていかれます。
さらに現在の中1から英語の学習レベルは上がり、学習する単語数も約5000語ほど増えることになりましたので、かなり急いで学習しないと間に合いません。
しかも、一番大変なのが、中学からは「書く」ことがあたりまえになります。
今まで一切書けなくて良かった小学校英語からいきなりたくさんの単語を書けなければいけなくなります。
結局小学校で「書けなくてもいい」として、難しい英語をたくさんやらせておきながら、その難しいことを中学でいきなり「書けなければいけない」状況に置かれます。その間、誰も「書く」ことを教えていないのにも関わらずです。
国語で想像してみてください。「あいうえお」も何も書けなくていいよーと言っておきながら中学校で漢字や四字熟語をいきなりやりますか?英語も本来言語なのですから国語と同じように「書く」ということをしっかりやらないといけません。
そこで、結局誰も教えてくれないわけですから自主的に「書く」をやっていかなければならなくなるんですね。
<ベストな対策は>
英語が難しくなるならば、英会話教室にいかなければ!とお思いになるかもしれませんが、むしろ今までよりも「書く」ということが重要になってきます。
英会話教室のようなことを学校がやるわけですから、これからもし習い事を検討するのであれば、「書く」ことを中心に教えてくれる塾をオススメします。
これは、私は学習塾の塾長だから言っているのではなく、今の中学校や高校、大学入試を見据えて必要なことを語っています。
読めて聞けて話せても、書けなければ点はとれません。
結局点数が成績に一番ひびきます。
以前の記事に習い事の話について書きましたが
↓
「幼い内に英語に触れないと英語耳が育たない」とお考えの方多いですよね?
それは今の子供達においては全く心配いりません。
今の子供達は格段に昔よりもリスニング能力がたけています。
なぜなら日常に英語があふれているからです。
海外旅行へ行く機会も増えました。
英語の歌もいつでも流れています。
海外ドラマも増えています。
街に外国人が増えています。
自然と英語に触れる機会が格段に多いのです。
事実、当塾の生徒さんで、小さい頃に英会話教室に通っていた子と、全く通っていない子と、リスニング能力に差はありません。
英語が嫌いといっている子でもカラオケで海外アーティストの曲を完全に歌い切ります。
将来海外で生活することを見据えているのであれば、幼い頃から英会話教室に通うのも必要かもしれませんが、日本の大学へ進学するならばリスニングや発音を気にするよりも、誰も教えてくれない「書く」ことに集中した方が確実です。
また、もし幼い頃から英会話スクールに大金を使うのであれば、ぜひ中高一貫の私立の学校で英語に力を入れている学校(難関でなくてよい)を検討してください。
難関私立を受験する必要はありません。
私は中学受験については色々思うところがありまして、一概に「受けたほうがいい」「受けない方がいい」と判断できるものではないと思います。特に難関私立受験は中途半端な気持ちや知識ならば「やめたほうがいい」とアドバイスすることの方が多いと思います。
ただ、難関私立でない私立中高一貫校受験は推奨する場合もあります。それは
- いじめが少ない学校が良い
- 英語教育のしっかりした学校が良い
- 厳しい躾をしてほしい
という場合です。
中高一貫のメリットは、同じ学校で統一した授業を受けられるという事です。
国の教育指針が実験的にコロコロ変わる影響を受けやすい公立の中学校高校で3年ごとに入試が入ってくると、教育方針も違う上に入試勉強で時間を奪われます。
中高一貫であれば、同じ環境の教育を6年間通して受けられますし、公立よりも授業の質は高いです。高校入試の必要もありませんし、余裕をもって大学入試の準備もできます。
もし、英語を重視するのであれば、英会話教室より是非私立中高一貫校にお金を費やす事を強くお勧めします。
しかし、そもそもなぜこんなに英語英語とあわてなければいけないのか、一番大切な日本語すらあやふやになってしまっている時代です。もっと力をいれて勉強しなければいけないものがたくさんあるのに、変な流れになってしまっていると常日頃疑問をもちます。
この改革にまどわされず、自分の子供にはこういう教育をしたい!という理念があれば全く心配することはありません。ご自分達の判断を信じて英語以外の理系科目に特化した学校を目指すもよし。芸術の道に進むもよしです。大事なことは子供がどうしたいのか、どう育ってほしいか、よく考える事と、周りの意見に惑わされない事です。
「皆が英会話教室にいっているから」「皆が受験するっていってるから」ということで子供の将来を決めないでください。
この改革が後に「改悪だったね」といわれないことを願います。
【スポンサーリンク】
(写真:ぱくたそ)