私立中学受験ってよく聞くけれど、した方が良いのか、必要ないのか。
今回は話が長くなるので、最初にメリット・デメリットを親目線、子目線でリストアップしますね。
※ちなみに難関私学中高一貫校の話です。
<メリット 親目線>
- 質の高い教育を受けられる
- エリートに育つチャンスがある
- 知り合う人達もエリートが多い
- ステータスになる(自慢の子供)
- 高校入試がないので楽
- 公立より施設が充実している
- 公立よりいじめが少ない(イメージ)
などなど
<デメリット 親目線>
- お金がかかる(合格前も合格後も)
- 家族全体を巻き込む忙しさになる
- お友達がライバルになる(ママ友が敵予備軍になる)
- ストレスがすごい
- 受かるか受からないかギャンブル(受からないと地獄)
≪メリット 子供目線≫
- 受かれば周りからすごいと言われる。親にも褒められる
- 学校以外の友達ができる
- 高校入試がないので楽
- 受かれば自信がつく
- 学校の勉強がとても簡単に思える
≪デメリット 子供目線≫
- お勉強が好きでなければ地獄
- 受験までの3年間好きな事はできない
- ストレス
- 受からなかったらもっと地獄
- 親が怖く感じる
こんなところでしょうか。
私立中学を受験する理由は色々あると思います。親がその中学出身で、よく内情を把握しているので安心という方もいますし、逆に親は勉強してこなかったから子供には質の高い教育を!と望む方もいるでしょう。
私立中学も様々ありますので、宗教色の濃い学校、伝統と歴史のある学校、東大進学率の高い学校、新しい試みを沢山する学校等々バラエティーに富んでいます。
親としては子供により安全・安心・高品質の教育と教育環境を与えて色々な可能性を広げてほしいと思うでしょう。
学習塾塾長からのアドバイスとしては
受験向いている方
- 親が私立中高一貫校出身で、その学校をとても気に入っているので子供にも同じ学校へ通わせたいと思っている方
- 代々受験をするのが決まりのご家庭
- なぜだかわからないが、子供がものすごく勉強好きで教えてもいないのになんでも理解してしまう天才という方
- 子供がどうしても受験したいといっている
受験しない方が良い方
- 子供があまり勉強を好きではない
- 公立でもいいけれど、せっかくなら試験だけでも受けてみようかなと思っている方
- 経済的に余裕のない方
- 受験自体よくわからない方
上記の方は後で詳細を説明しますが、難関私立受験は軽い気持ちでできるほど甘くないです。失うものの方が多いのでおすすめしません。
そして、偏差値の高くない私立への進学をオススメする方
- 子供がおっとりしている
- いじめられやすい
- 女子校または男子校へのこだわりがある
- 経済的に余裕がある
- 公立の教育に不安がある
上記の方々は是非難関ではない私立へ行っていただきたいです。偏差値のそんなに高くない私立であれば、受験は全然厳しくないですし、英語教育をはじめ、様々な施設、教育が充実していて、いじめも少ないですし安心だと思います。
では、ここからは中学受験は実際どんな感じなのか。今回は私自身が体験した私立中学受験のお話をいたしましょう。
(※ ↑「私が体験した」なので、昔の話ですが。むかーし、むかし。。)
そして、とても話が長くなるので、ここでいいや。と思う方はここまで読んでくださってありがとうございました。メリットデメリット踏まえて受験をするしないの参考にしてみてください。
【中学受験】
ーきっかけー
私はとにかく習い事を沢山させられて育った子でした。幼稚園ぐらいから体操教室、水泳、バレエ、ピアノ、絵。。。色々やったおかげで、運動神経はゼロということがはっきりして(笑)運動系の習い事はすぐに辞めました。
通常は運動を組み合わせたほうがストレス発散につながり、勉強がはかどる子が多いのですが、私はペットの猫と遊んだり、絵や工作をしている時が一番幸せを感じる子供だったので、運動は逆にストレスとなり、辞められたときは嬉しかったです。
小学一年生になった時に学習塾と書道教室に通いだしました。早くに塾に通っていたので学校の授業はつまらないと感じるほどで、成績に問題はありませんでした。世の中も徐々に私立中学受験ブームに沸きだし、ドラマもできるほどに。。。そして、小学4年生の時に、今まで通っていた学習塾を辞め、学校の友達と中学受験専門の大手学習塾に通いだしました。
ー専門塾へ入塾ー
その大手学習塾は(Y塾)入塾テストがあり、一定の水準を超える得点をした生徒を正会員、少し点数の足りなかった生徒を準会員と位置づけ、一日で2科目以上をほぼ毎日夕方から夜まで、そして日曜日も日曜テストがあります。団体授業のスタイルで、入塾テストで成績の良かった子には飛び級システムもあり、小学3年生でも4年生と一緒に勉強させていました。
今思うと、同じように入塾させるのになぜ正会員と準会員に分けられていたのか謎ですが、(授業は同じように受けられる)この時、私は正会員、友達は準会員となってしまいました。
最初の授業でいきなり10問ほどの少テストがありました。驚いたのは、テストの中身は今まで自分が習ったことのないものばかりでした。自分は本当に正しい教室にいるのかと不安になるほど、テストの中身はわけのわからない内容で、結果は散々でした。でも、「小学校でまだ習っていないものだから、テストができなくてもしょうがないよねー」と思っていたら、できる子は8割~9割得点していました。
そして驚いたのが、9割得点していた男の子が狂ったように泣いて、「自分はバカだ」と満点を取れなかった自分に落胆し、筆箱で自分の頭を思い切り殴り始めたのです。
小学4年生ですよ。。。よく見ると白髪の子も多くいました。
大手塾では予習をして授業に臨まなければならず、授業はほとんどテキストをなぞるだけ。授業中はずっとテストを何枚もします。授業で予習をしてきていない(理解を終えていない)子は置いて行かれます。
間違えた問題の数だけ席を後ろに移っていかなければならず、もう下がることができないと、立って授業をうけます。ひどい時は廊下にでます。
その日から授業を見学していた母もショックを受けて家に帰ってから復習と次の日の予習に慌てました。わからない問題があって解説を読んでもよくわからず、毎日泣きながら夜中まで復習と予習をして、塾に晩御飯のお弁当を持って通い、日曜日にはテストという日々。。。Y塾に通いだしてから家族と夜ご飯を食べた回数は数えるほどしかありませんでした。
日曜日のテストというものは本番の入試を想定し、毎回受験票も用意し、ものすごい緊張感の中で行われます。満点を取ると満点賞という賞状や賞品がもらえたり、全校舎の生徒の成績上位者のリストが発表されたりと、とにかく競争心をあおる工夫がすごかったです。
ー学年があがってー
5年生6年生と学年が上がるにつれ、さらに過酷になっていきました。
とにかく時間がないのでピアノと習字は受験を理由に辞めました。
同じ塾でも、場所によって良い先生がいるいないなど、差があるので私自身3つの違う校舎に毎週通っていました。一番遠い校舎へはバスで30分地下鉄で40分かけて通っていました。
当時は中学受験をするということは秘密にしている人が多かったので(学校の保護者の間でいらぬ噂をされる)ひたすら学校には塾に通っている事は内緒にして、見つからないように学校から走って家に帰り、走りながらおやつを食べてバスと地下鉄を乗り継ぎ、移動中も勉強するという毎日でした。
しかし、本当に先生の教え方というのは重要で、当時人気だった理科の先生が教えた時、その授業を受けた生徒全員が日曜のテストで満点を取るという現象がおきたほどです。
ですから教科ごとに良い先生のいる校舎へ通っていく事になります。これは皆やっている当たり前の事でした。
そして各季節講習ではY塾の他にK塾、N塾、に通い、家庭教師も4人。。。眠すぎて疲れすぎて、授業中に意識が飛ぶような感じ(眠った?)が何度かありました。
また、Y塾では母親教室というものもあり、子供が受ける授業とまったく同じ授業を母親にもします。そして母親が家で教えられるようにしていきます。
そのほかにも特別会員など、特に優秀な子はまた特別料金を払い、授業を受けます。
合宿を行う塾などもありましたし、当時の受験ブームは異常だった気がします。
小テストで満点をとれなかった事を笑われた男子が笑った男子の首を絞め、救急車が来たこともありました。帰り道にクラス1位の子が満点を取れなかったと言って、泣きながら電信柱にずっと頭をぶつけ、流血してもぶつけ続けていました。ある友達のお父様は受験が原因かはわかりませんが、過労死しました。
―いよいよ近づく入試ー
入試が近づくと、面接の練習や色々な学校の傾向と対策など、専門塾ならではの取り組みを沢山してくれます。入試前日までに校歌ならぬ塾歌を皆で歌い、胸に塾生のつけるバッジと合格祈願をした鉛筆が渡されます。
いよいよ入試当日、各学校の正門前に各塾の先生達が朝から待機して、自分の塾生の証であるバッジをつけている子を発見しては握手をして応援してくれます。まるで韓国の大学受験のようにです。
ー合格発表ー
幸い私は第一志望校の学校に合格することができました。でも最初に一緒に塾に通った準会員になってしまった友達は同じ学校を受験して落ちました。その時私の母親は友達のお母さんに「入塾したころからずっと嫌だった。もう二度と関わりたくない」と言われたそうです。
通塾している間はそのお母さんはとてもよくしてくれていて、よく車で一緒に送ってくれたり、誕生日もお祝いしてくれていたので、受験が終わった時悲しかったです。
―振り返ってー
受験は本当にストレスのたまるものでした。私は親が良い学校を出たわけでもなかったので、本当に世の中が受験ブームになっていて、友達も受験するし、よくわからないけれどやってみようかというぐらいのきっかけで親に決められるまま受験しましたが、自分でやりたいと言ったわけでもないのに、学校の成績はいいのに、毎日毎日怒られ、好きな事をする時間もなく、本当につらかったです。
幼稚園から大学までストレートにいける学校にいたので、受験する必要もなかったのですが、お受験ブームに踊らされて難関私立に挑戦してしまったような感じでした。
姉が一人いるのですが、姉は受験せずにそのまま大学までストレートに行きました。
当時は「なんでお姉ちゃんは遊んでいて何も言われないのに、私は毎日怒られるのだろう」と悲しかったです。
ーそれでも子供は親を喜ばせたいー
当時は今と違って、学校の先生も竹刀を持ち、生徒を叱るときは竹刀で尻を殴っている時代だったので(小学生にも)受験勉強がうまくいかないと、親からもそうとう暴力を振るわれました。満点がとれないと風呂場に連れていかれ、冷水をかけられる。こぶができるまで頭を殴られる、本を投げられ顔が切れて流血する。あまりにも辛くて、「公立にいきたい」と言ってみた時には真冬にパジャマのまま家の外に閉め出されました。自分の誕生日は小学5年から祝ってもらったことはありません。第一志望校も親が決めたものです。自分が行きたいと思った事はありません。
でも、子供は親が言ったことを信じます。親が「あの学校がいい。あそこへ行きなさい」と言えば子供は自分もその学校へ行きたいと言います。
模試で良い結果が残せず、悲しむ親をみて子供は胸が苦しくなるほど悲しくなります。
自分のせいで親が悲しんでいる。そう思うと自分がとてつもなく悪い子のような気がします。だから自分を罰するために筆箱や電柱に頭をぶつけ続ける子供が出てくるのだとおもいます。
親は子供の為に頑張っていると思っているかもしれませんが、中学受験は子供が親の為に頑張っていると思ってください。
だからどんなに親が怖くても喜ばせるために必死で頑張ります。
―結局受験はしてみてどうだったのかー
うーん。これは難しいです。中学受験は高校入試とは違い、子供の意志があまりありません。そして、小学生は楽しさを見つけるのが上手ですから、つらい毎日でも塾で楽しい事もたくさんありました。何より、特別頭が良くもなく、自己管理もしっかりできなかった私が難関私立に受かり、人並みの学力を持てたのは、この経験があったからだと思います。
特に今個別指導塾の塾長をしていて、足し算引き算もできない小学校高学年の子に出会うと、これぐらいやらないと間に合わないのにな。。。と思う事もあります。
でも時代は変わりました。今は良い大学を出ていなくても就職に困ることはほとんどありませんし、大学も一般入試よりも指定校推薦、AOなど、安全に受験する子が増えています。高校もこだわらなければ必ずいけます。
ですから、一概に受験は良い悪いの判断が出来ませんが、生きていく上で必要かどうかと言われれば必要ないと思いますし、
よっぽどの覚悟とお金の余裕がなければおすすめしません。
結局苦労して合格した学校は私には合っていませんでしたし。w (どーゆーオチ?)
ですから中1,2年の頃は荒れました。あんなに苦労して、なんなんだよこの学校!と思いましたし、体が成長するにつれ、その怒りは受験の時暴力をふるった親へと向けられていきました。(それでも親の方が100倍怖かったので、結局大人しくしましたが。)
でも、やはりぐーたらな私には得られたものは大きかったです。
ー私にとって良かったことー
- 勝ち癖がついた
- 質の高い教育を受けられた
- 受験がつらすぎて、その後の人生で辛いことがあっても「へ」でもなかった。w
勝ち癖がついたのは本当に感謝です。なんというか勉強のコツが分かるという感じで(自分の弱点もよくわかっている)自分にはどういう勉強法でどれぐらい前から取り組まなければいけないか、というのが分かるので、その後大人になっても受ける資格試験は全て一発合格です。
質の高い教育は、やはり私立ならではで、私は高校卒業後アメリカの大学に行きましたが、最初に英語で困るということは少なかったです。やはり難関私立中高一貫の英語教育の質は高いと思います。
そしてなにより受験の時のつらさがその後の人生を生きやすくしてくれています。
でも、これは第一志望校に合格できていたから思えるのかもしれません、落ちていたらこう思えていたかわかりません。
ー最後にー
難関私立中学受験は答えの無い物だとは思いますが、相当の覚悟がないと厳しいです。
でも、以前紹介した学力や生活力に不安のある子ども達や、中学3年生から高校入試の勉強やるかーなんて思っている甘い子には、ここまでとは言いませんが毎日必死になるぐらいの勉強をしてほしいとはおもいます。
ただ、中学受験は一時ではなく、その後の人生に大きく関わるということは忘れないでほしいです。
今回は大変長くなりました。
いやはや、
お疲れ様です!
(写真:ぱくたそpakutaso.com)