悩めるママ達に!学習塾の塾長が教えるかしこい子育て方法

とある学習塾塾長が他塾の塾長から怒られそうな勉強・進学・育児についてのヒントをお伝えします。

【スポンサーリンク】

【指導事例②】小学3年生で入塾B君 自閉症。

【スポンサーリンク】

 

 

 

 

f:id:SyMy:20190425162733j:plain


今まで当塾に在籍していた学習障害等があると言われていた子の指導事例シリーズです。

 

前回は知的障害のある子のお話でした。

 

www.toarujukucho.com

 

 重ねての記述になりますが、当塾は学習障害の専門塾ではなく、普通の個別指導塾です。

私も専門家ではありません。それでも年々学習障害のある子の入塾数は増えています。

それは昔に比べてそういう診断がされやすくなったのか、それとも人数が増えているのかわかりません。

 

同じ学習障害の診断名のついている子でもタイプが全く違う子もいますし、毎回手探り状態で対応し、もっと効果のある指導法はないかと奮闘しています。

 

今回は自閉症の子のお話です。

 

【B君入塾】

 

B君は元々B君のお兄ちゃんが当塾に在籍していたので、小学3年生の時に入塾してきました。

その数年前は重度の自閉症と診断され、その後重度ではなくなり、小学校1年生から公立小学校の特別支援学級に在籍していました。

 

緊張しやすい子だったので、他の塾ではなく、お兄ちゃんのいる塾を迷わず選択したのだと思います。

 

彼が入塾した当初、1時間落ち着いて座っていられませんでした。

 

騒ぐということはなかったのですが、算数をやっていてもそわそわして集中できなかったようなので、集中が途切れだしたかなとおもったら、

 

  漢字のプリントをいきなり出す

   

→ 「ん?」となって、漢字に興味を持つ

 

→ 少し漢字をやったら今度は算数のプリントに戻る

    

というふうに気分転換をさせるようにしていったら、段々と算数1時間集中することができるようになっていきました。

 

小学5年生になると塾の事や担当の先生の事はすっかり信頼してくれていて、(たまに担当の先生が変わると固まることがありましたが)週2回(国語と算数を1回ずつ)の通塾に増やし、お母様の希望で小学3年生の範囲を繰り返しやりました。

 

お母様は小学3年生の範囲を希望していましたが、本人は「また3年生~?もう5年生だよお」と発言する事があったので、教材に「3年生」という表記がなく、「Vol.3」などの表記の物を使うようにして、本人のプライドを傷つけないようにしました。

 

また、3年生の範囲のものもよくできていたので、お母様にも「4年生の範囲のものをやっていきたい。できなければすぐ3年生に戻すので。」とお願いして、だんだん学年をあげていきました。

 

指導する時に、できたものはとことん大袈裟なぐらい褒めました。そして苦手なものはあまりこだわらずに飛ばしました。彼は文字もきっちり枠の中に均等に書くことにこだわりがあったので、「きれいにかけて偉いね!」や「姿勢がきれいだね!」等、勉強以外のことも褒めるとどんどん字もきれいに、授業態度も良くなっていきました。

 

一度に色々な事を言うと混乱することがあるので、なるべく伝達事項は簡素化し、本人に伝えたことはお母様にもメモを書いてお渡ししました。

 

6年生になるまでに算数も国語も6年生の範囲のものを学習することができ、国語はかなり得意になっていたので、6年生の途中から英語に切り替えました。

 

実は彼のお母様は外国の方だったので、英語はまあまあ知っている単語も多く、抵抗はあまりありませんでした。英語を勉強する時、「小学6年生なのに中学1年生のお勉強だよ!」と大喜びでした。

 

そこから自信がさらにつき、算数も今まで苦手としていた問題に自らチャレンジしようとしたり、「算数も中学1年生の問題できちゃうかなあ?」と意欲を見せ始めました。

 

【そして中学生に】

 

B君もとうとう中学生になりました。彼は公立中学校特別支援学級へ進学。塾では英語と数学を継続しました。数学の教材は難易度が易しめで、「数と式」「図形」「関数」と範囲ごとに1冊ずつ分かれているものにしました。英語も同じく易しめの教材を使用しました。

 

はっきりいって、他の「やんちゃ」で勉強を全然していない生徒さんよりかなりできていました。

 

英語よりも数学の方が難しかったようです。「数と式」は得意で、問題集1冊終えた後、いざ「図形」に入ったら「うーん」となってしまいました。でも、「○○君、あんなに難しい『数と式』1冊できちゃったんだから、これもできちゃうかもよ?」といって励ましたら、「見るだけ見てみるぅ。」となり、結局「図形」も「関数」も1冊完了できました。

 

そのペースでしっかり中学3年生の範囲を英数ともに中学卒業までに学習することができました。

学校ではテストがなかったのですが、テストをうけてもかなりよくできたのではないかと思います。(彼がテストという緊張した時間を耐えられたかどうかはわかりませんが。)

 

夏休みなどにはおばあ様に会いに海外へ行き、現地の子供達にボランティアで日本語を教える事もしていました。

 

【悩んだ進路】

中学3年生の夏、高校をどうするかでもがきました。

B君自信はあまりよくわかっていませんでしたので、お母さんが一生懸命調べていましたが、中学の特別支援学級はテストもありませんし、卒業しても単位がないので普通の高校へ行けないとのこと。

 

できれば特別支援学校に進んで、国の支援のもと、職業訓練を受けてほしい、そして将来働いて欲しいとお母様は望まれていました。もし特別支援学校に入れないと、特別養護学校になり、将来の仕事のサポートなどもないそうです。

 

お母様はB君が両親がいなくなった後一人で生きていける道筋を一生懸命作ろうとしていましたが、特別支援学校への進学はとても難しいようでした。

 

【難しい特別支援学校への進学】

B君のお母様の話によると、特別支援学校へ進むと国のサポートがあるそうで、中学校で特別支援学級だった子達は特別支援学校への進学を希望する子が多く、倍率が非常に高いそうです。

また、特別支援学校では職業訓練の授業があるので、会話が成立しやすい子が受かり易いそうです。(教えるのが簡単な子)

 

B君は会話はよくできるのですが、自分の気に入った話を何度も繰り返したり、たまに他の人の言っていた事が混じっていたりするので、時々会話が成立しないことがありました。特に信頼していない相手には緊張してしまってうまく話せない事も多くありました。

 

さらにB君にとって不利だったことは、最近中学校の特別支援学級に障害がなくても「お勉強が出来ない」だけの子が入ってくることが多く(学校がすすめる)、ほぼ健常者の子が特別支援学校進学の枠をとってしまうそうです。

 

(より支援が必要な人に支援がいきわたっていないような。。。)

 

また、特別支援学校へは中学校の推薦で行くため、中学校の協力が必要不可欠なのですが、B君は幼少期に「重度の自閉症」と診断されていて、「重度の診断がある子はまず受からないから推薦しない」と学校から言われてしまったそうです。

 

今は重度ではなくなっているのですが、幼少期についてしまった診断履歴のせいで、学校の協力を得られないという事に納得いかなかったお母さんは昔の記録から一生懸命当時の診断をした先生を探し当て、(病院も移られていて、探し当てるが大変だったそうです。)訂正してもらい、なんとか学校に推薦してもらえるまでこぎつけました。

 

こちらができることは、面接の練習ぐらいだったので、時間の許す限り面接の練習をしました。

 

結果は残念ながら不合格で、B君は特別養護学校へ進学することになりました。

 

現在、本人はいたって楽しそうに通学していますが、(退塾後、時々遊びに来てくれています)英語の授業はほとんどなく、(週に1時間程度。やりたいと言ったらやってもらえる)少し勿体なく感じます。

 

でも、塾へ通ったことで、彼の学習が小3で止まることなく続けられたことは良かったと思います。

 

【学習のポイント】

塾で意識したことは次のようなことでした。

  1. 出来たことをとにかく褒めちぎる
  2. できないことにこだわらない(今は飛ばして、あとで戻って復習する)
  3. 勉強以外の彼の良い所も褒める
  4. 「決まり事」「ルール」を守る事が安心するみたいだったので、「ルール」を明確にする
  5. シャーペンや鉛筆の濃さは3B、4B
  6. 伝達事項はシンプルに
  7. 大事なことは直接保護者に電話&メモ
  8. 「大好き」と伝える

 

【ポイントの解説】

 

①出来たことをとにかく褒めちぎる

  

前にも説明しましたが、とにかく大袈裟に「すごい」「感心する」「みんなこれは難しいと感じるのにB君はできるんだね!」など、褒めちぎりました。

褒められて悪い気はしないはずですし、B君は褒められるとどんどん意欲的になってくれて、がんばってくれました。

 

②できないことにこだわらない(今は飛ばして、あとで戻って復習する)

 

小3の範囲でわからないものがあって、できるまでやり続けようとしても、できるようになるかわかりません。どんどん苦手意識が強くなるかもしれません。だったら今はそれを飛ばして(一度はしっかりやります)次の範囲をやり、「これができるなら前のもの簡単にできちゃうかもよ~?」とモチベーションをあげて再度チャレンジさせました。

これは、B君だけでなく、他の子にも時々やります。中3になってから中1のものをやると簡単に思える事ありますよね。精神的な成長も勉強には大事な要素なので、時間が解決してくれることもあります。

 

③勉強以外の彼の良い所も褒める

 

彼は褒められると本当にがんばってくれる子だったので、姿勢の良さ、字のきれいさから服のセンスの良さまでありとあらゆる彼の良い所を褒めました。そして自信をつけてもらいました。お兄ちゃんや学校の友達の影響で汚い言葉遣いをする事もありましたが、褒めると必ず「そうですか~?」と敬語で照れていたのがとてもかわいらしかったです。そしてますます字も丁寧に書く事を意識したり、褒められた事のレベルを下げないようにがんばっていました。

 

④「決まり事」「ルール」を守る事が安心するみたいだったので、「ルール」を明確にする

 

B君は決まりやルールを守ることが安心するタイプでした。(年齢が上がるにつれ、家族の決めたルールにはあまり従わない事も増えたようです。ゲームの時間など w)

ですから、文法を教える時も、「○○の時はこういう決まり」という風に「決まり」「ルール」という言葉をはっきり使って説明しました。

 

また、塾で汚い言葉遣いをしたり、びんぼうゆすりをした時に、注意するときも、

「それは汚い言葉遣いよ。」とまずはっきり言います。

すると、「みんな学校でいっているよー。」と反論してきます。

「みんなはじゃあお行儀悪いね。B君は真似しちゃだめ。」と伝えます。

「えー。なんでだよお。」とまだ不服そうです。

「ここは塾で、私がルールを決める人だから!そしてB君はここの生徒だから!」と言い切ります。

 

全然納得のいく理由ではないかもしれません。でも、彼には「ルール」のほうが強く頭に残ります。

 

すると「はあい。」と見事に納得してくれます。

 

フォローとして、「そういうお約束をしっかり守れる素直なB君は本当に素敵よ。」とほめると、「そうですかあ~?」とまた照れ臭そうに喜んでくれます。

 

⑤シャーペンの濃さは3B、4B

 

これは、B君だけにしか有効でないかもしれませんが、彼は字をとてもきれいに丁寧に書くことにこだわっていたので、物すごく筆圧が強かったのです。そのため、HBのシャーペンで書こうとすると、強すぎてテキストが削れてしまったり、芯がしょっちゅう折れてしまったり、間違いを消す時にきれいに消せないということがあったので、3B,4Bの芯を用意しました。

 

気のせいかもしれませんが、他の学習障害の子でも、視力が弱かったり、筆圧が強い子がいたので、濃いめ、柔らかめの芯をその子達にも使いました。

 

⑥伝達事項はシンプルに

 

とにかくたくさんの情報を伝えてしまうと、混ざってしまったり、忘れてしまったりと混乱することが多かったので、例えば来週の予定が変わる場合でも、塾に来た時でなく、帰る時に伝え、予定が変わる理由は伝えずに「来週〇曜日○○時!」という風に短く伝えました。同時に必ずお母さんにもお手紙や電話で伝えました。ただ、本人を通さず直接お母さんとだけやり取りをするということはしませんでした。

 

本人が自己管理することが大事なので、あくまでお母さんはもしものフォローということで伝えました。

 

⑦大事なことは直接保護者に電話&メモ

 

これは⑥でも説明しましたが、大事なことは直接保護者に電話やメモで伝えるようにして、いつ本人が混乱してもフォローしてもらえるようにしていました。また、B君のお母様は外国の方でしたので、(日本語はとても流暢でしたが)もし細かい話まで理解できていない時の為に紙に明記するのは大事だと思い、2重3重に確かめられるようにしていました。

 

⑧「大好き」と伝える

 

これはB君だけでなく、どの生徒にも私は意識して伝えるようにしています。

なかなか「大好き」だとか「大切に思っている」ことは家族間でも直接言葉にして伝えませんよね?B君のお母様は外国の方だったので、よく「愛している」とお伝えのようでしたが、普通は塾の先生から「大好き」だとか「愛してる」といわれることはほとんどないとおもいます。

 

ただ、長年子供達を見ていると寂しがっている子が多いと思います。

 

共働き世代も多くなっていますし、以前紹介したような6以上の数が数えられない子なども、コミュニケーションがしっかりしていれば親が気付くはずですが、最近親が気付いていないということが増えているように感じます。

 

 

www.toarujukucho.com

 

 

私は「一度うちの塾に入塾した子は一生私の生徒」という気持ちで塾長をしているので、生徒が頑張った時も「計算ずっとがんばって練習していたの見てたよ。そういうところ大好きよ」とかはっきり言葉にして、「いつも見ている」ということを伝えます。

さみしがりの激しい子や、ネガティブ思考の強い子には「愛してるで!」(関西人ではありませんが、ちょっと恥ずかしいのでこう言ってしまいます w)と大きな声で宣言します。女の子には許可をとってハグもします。(注:私は女性です)男の子には親指を思い切り立てて「グー!」サインをだしたり、許可をとって頭を撫でます。

 

家族以外の他人、まして塾の先生から「愛してる」などと言われることはほとんどないでしょう。でも、言われるとどんなに内気な子でも、笑顔をみせてくれます。そういうときも「今、笑った!笑ったよね!良い笑顔だなー!大好きだなー!」と食いつきます。

 

特に、中学生になると、心が大人と子供の間で不安定になっている時があります。もう赤ちゃんの時のように甘えられないけれど、無性に甘えたい時があったり、言いようのない孤独感があると思います。(大人でもそうかもしれない)だから、「家族以外で、あなたの事をちゃんと思っている人がいますよ!」というのをはっきり伝えます。

 

事実、うちは卒塾した生徒達が(中には就職した社会人も)しょっちゅう遊びにきてくれます。そして、学校のことや色々な悩みを話してくれます。それはこういう風に私が気持ちをちゃんと正直に伝えてきた結果かな?と勝手ながら思っています。

 

【最後に】

B君の体験をふまえ、最近入塾の増えてきた学習障害のある子や、著しく勉強の苦手な子への指導は「あせらない」事を意識しています。そしてB君のお母様が後悔・奮闘していた姿を見た上で、「特別支援学級」にはいるか迷っている保護者さんには体験談をお話して参考にしてもらっています。

 

今回のこの話が自閉症の子をもつ保護者さんや、他塾の先生方の参考になれれば嬉しいです。

【スポンサーリンク】